家 売却 減価償却

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家を売って赤字になる場合

昨年、15年前に3,000万円で購入した木造一戸建てを、2,000万円で売却したAさん。完全なる赤字です。そこで、確定申告はしない事にしました。
ところが、それがとんでもない誤解で、危うく申告漏れを指摘されるところだったと言うではありませんか!? これって、一体全体どういう事なのでしょう?

 

家を売った年の確定申告は必要か、必要でないか?

 

確かに、我が国の税法においては、家を売って利益が出た場合には、譲渡所得を得たものと認識されます。そのため、必ず確定申告し、所定の税金を納めなければなりません。
また、例え損益が出ても、確定申告により、所得税を還付してもらえる可能性がありますので、基本的には、家を売却した年には税務申告をすると思っておかれた方が良いでしょう。
ただし、損益が出た場合は、あくまでも自己申告すれば還付があるかもという話で、義務化はされていません。ですので、放置しておいても違法にはなりません。

 

ところが、この譲渡所得の計算は、単純に売却価格引く購入価格ではないんですねぇ!! なんと、実際には、売却価格引く取得費で計算されます。そのため、自分の中では完全なマイナスでも、税務署に言わせればプラス、利益を得たと見なされる事がしばしばで、実は確定申告が必要という人も少なくないのです。

 

取得費とは?

 

ならば、この「取得費」とは何者かと言えば、建物が持つ最低限の価値と減価償却費を考慮して弾き出された数字です。家というのは立派な建造物ですが、日々雨風に曝されたり、直射日光を浴びたり、時に地震に襲われる事もあります。そのため、経年劣化は否めません。

 

事実、ある程度の年月がたつと、あちらこちらに不具合が生じ、雨漏りやひび割れのように、修理を余儀なくされる事も多々あります。そう、年々価値が下がって行くのは当たり前というもの! 従って、古くなればなるほど評価額は下がってしかるべしなのです。
そこで、この劣化による価値の低下を「減価償却」と呼び、減価償却費として購入価格から差し引かなければなりません。

 

減価償却費とは?

 

「減価償却」とは、経年劣化による資産価値の自然減少を数字として定め、それを積み重ねて行く事を言います。そして、その総額が「減価償却費」です。家 買取 相場ってご存知でしょうか?相場はあってないようなものとよく言われますがまさにその通り。不動産屋さんによって数百万単位で価格が変わってくるのはザラです。
例えば、毎年10万円ずつ価値の下がる建物の10年間の減価償却費は100万円です。つまり、1,000万円で買った家も、10年後には900万円の価値しかないという事です。勿論、常日頃の扱い方や手入れによって、実際に受けているダメージは大きく異なりますから、売買取引においては、確実に100万円減という事はありません。限りなく購入価格に近い金額で売れる事もあれば、減価償却費を差し引いた値段よりさらに大幅に下回る事もあるでしょう。
しかし、固定資産税等の適正な税金を算出する際、1軒ずつ見て回るのは大変と言うより、事実上不可能です。そこで、世間一般的な対応年数を定め、それを前提として検討された減価償却率というのが用意されているのです。

 

ただし、木造と鉄骨とでは、元々の劣化速度が異なりますから、同じという訳にはいきません。また、日々不特定多数の人が出入りするような店舗と、家族だけが静かに暮らす個人宅とでも、建物の傷み具合は違って来ます。そのため、まずは木造か鉄骨かという建物構造、それに、業務用か非業務用かという用途に区分し、それぞれの減価償却率が設定されています。因みに、個人所有の住居の場合は、鉄骨なら70年間はそれほど急激に価値が下がる事がないものの、木造なら、33年間品質維持出来ればいいところだろうと見られています。そこで、この目安となる年月を対応年数とし、その間は毎年一定の率で減価償却費は積算されて行きます。
例えば、鉄骨の場合は、対応年数が70年、減価償却率が0.015%です。これが木造になれば、対応年数33年、減価償却率0.031%となります。木造の方が明らかに早く傷むだろうという事です。

 

以下、各種住宅の対応年数と減価償却率です。

 

木造・・・33年・0.031%
木骨モルタル造・・・30年・0.034%
鉄筋コンクリート(鉄骨)・・・70年・0.015%
金属造(骨格材肉厚3mm以下)・・・28年・0.036%
骨格材(肉厚3o超4o以下)・・・40年・0.025%
骨格材(肉厚4o超)51年・0.020%

 

収得費と譲渡所得の計算

 

とは言え、どんなに古く鳴って雨漏りの激しい家でも、土台からボロボロという事はなく、建物としての最低限の価値は持っています。そこで、この最低限の価値を「残存価格」と言い、購入価格の0.9%と見る事にされています。ですので、厳密な取得費の計算式は、
「購入価格×0.9×減価償却費」となります。
そして、減価償却費は、上記の減価償却率に経過年数を掛ければ弾き出せるという訳です。尚、経過年数の算出においては、6ヶ月未満は切り捨て、6ヶ月以上は切り上げて計算する事とされています。そのため、購入から15年3ヶ月で売却した場合には、15年となりますが、15年10ヶ月で売却した場合には、16年となり、さらに価値は下がります。

 

という事で、譲渡所得を算出するには、購入価格から残存価格と減価償却費を差し引いた取得費を先に出さなければなりません。
「売却価格−(購入価格−購入価格×0.9%×減価償却率×経過年数)=譲渡所得」となります。
そして、それが売却価格を上回れば、利益を得た事になり、確定申告と納税の義務が生じるのです。

 

計算してみる

 

例えば、先ほどのAさんの例で見ると、

購入価格3,000万円、売却価格2,000万円と、明らかに1,000万円のマイナスです。
しかし、実際の取得費は、
「3,000万円−3,000万円×0.9%×0.031%×15年=1,744万5,000円」となります。
そこで、譲渡所得は、
「2,000万円−1,744万5,000円=255万5,000円」と、赤字どころか、立派な黒字です。
こうなると、確定申告が必要になるという訳です。

 

実際には、控除等もありますので、3,000万円程度の家を売却して、高額の税金が徴収されるという事はありません。しかし、申告しなければ、明らかに違法となり、それなりのペナルティーが課せられます。
Aさんの場合は幸いにも、会社の先輩からこの事を教えてもらい、事なきを得ました。けれど、これは大きな落とし穴の一つです。この事からも分かるように、やはり家を売却すれば確定申告もするというのをワンセットとして認識しておかれる事をお勧めします。